ホントは とじぇね

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

中卒の父親から学んだこと【お盆になると思い出す】

毎年、お墓参りの時期になると思い出すことがある。

墓地へ向かう途中にある古びた定食屋での出来事を。

 

 

 

僕の父は中卒。70歳手前の世代だが、それでも中卒なんて珍しいだろう。

典型的な田舎の農家で産まれた父。7人もの兄弟がいて、下から2番目。

子供という宝を授かったというよりは、労働力として生まれてきたようなものだと、自分では言っていた。

 

貧しい家庭で育った父は、高校へ進学するお金が無かったのか、自分から遠慮したのか、中学を卒業してすぐに社会人となった。

母と出会い結婚し、婿養子となり、僕のお爺ちゃんから引き継いだ田んぼで、稲作農家になる。

 

毎年繰り返される家族総出の農作業。

それだけでは生活の安定が見込めず、土木作業員として現金収入を得る兼業農家だ。

農家を取り巻く環境は、今とそんなに変わらずで、兼業農家として生計を立てている家がほとんどだ。

 

他の家の人たちは、会社員だったり公務員だったりで、その合間をぬって農作業をこなす。

しかし僕の父は中卒。学歴も無く周囲の人たちとは違う。

3Kと言われる土木作業員で、日雇いの仕事をしていた。当然収入も低い。

 

 

僕が幼い時の事。

家の近くに一軒だけある定食屋に、珍しく連れて行ってくれた。

外食なんてめったにないことで、嬉しくてワクワクしていた。

父と二人で入ったその定食屋には、大勢の客がいて、昼間っから酒を飲んで騒いでいる。

僕の手を引き、そそくさとカウンター席についた父。客のほとんどが顔見知りのようで、席に着いたとたんから、会話が始まった。

僕は幼すぎて、会話の内容までは理解できなかったが、周囲の客たちは父を見ながら笑い声をあげ、指をさし、手を叩いていた。

気づくと父は客たちに背を向け、注文した料理を無言で食べていた。

「お前も食べろ」

そう僕に言ったきり店を出るまで一言も会話することは無かった。

僕とも客とも。

そして店を出てから一言、父は僕に言った。

「俺のようにはなるなよ」

 

 

 

それからしばらく時は経ち、幼かった僕も成長し、おぼろげだったあの時の出来事の意味を理解できるようになった。

忘れようにも忘れられない。

僕たちは毎年の墓参りであの店の前を通るのだから。

 

父は馬鹿にされていたのだ。

めったに連れてくることのできない息子の手を引き入った店で、息子の目の前で馬鹿にされていた。たまには美味しい物を食べさせてやりたいと、息子を連れて行ったその店で。

店を出て言った僕への一言は、どんな気持ちから吐き出されたものだったのだろう。

 

f:id:mifuketa:20190528124317j:plain

 

 

僕の父は今もなお健在で、そして毎年繰り返される農作業を楽しそうにやっている。

母曰く「田んぼは俺の全てで、稲を作ることほど楽しいものはないんだ」と父は言っているそうだ。

決して多くを語らない父も、農作業の時だけは怒鳴り声をあげ、家族に指示を出す。

とにかく田んぼに夢中で、真剣で命を懸けていて。そんな気合の入った背中を僕は、何度も見てきた。

収穫の時には鼻歌交じりにコンバインに乗り、そして取れ高に一喜一憂する。

 

 

たしかに僕の父は中卒で、稼ぎも少なくて。

でも、青々と育った稲を、金色の稲穂を、腰に手を当て目を細めて眺めている、そんな父の姿を見ていると、もう感謝しかなくて。

 

たしかに、旅行に連れて行ってもらった事も無ければ、映画すら見に行ったことも無い。遊んでもらった記憶すら無い。

とにかく仕事をしている、農作業をしている父しか僕は知らない。

 

そんな父から僕は、言葉で何かを教わった事は無い。

 

でもね父さん。僕はあなたから『一生懸命』であることの意味を教わりました。

どんな時でも真っ直ぐに田んぼに向き合う、あなたの背中が好きでした。

あなたの背中から教わったものは、今も僕の心に、根性に、深く刻み込まれています。

 

 

 

中卒の父は、僕の誇りです

 

 

 

少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。