ホントは とじぇね

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

【スポ根 野球 実話】あの日の空は高く青く突き抜けて そしてどこまでも遠く広がっていた

長いですが、実話です。読み終わるまで15分ぐらいかかります。

お暇な方。スポ根好きな方。野球好きな方は是非読んでみてくださいm(__)m

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9回の表 1アウト ランナー3塁 スコア0対0 相手の攻撃

 

 

相手バッターは3番 この試合で1本ヒットを打たれている。

キャッチャーである僕は慎重にサインを選んだ。外角低めの指示。

 

 

6月中旬の空は青く澄み、爽やかな風が体に当たる。

木々に囲まれた中にある球場には沢山の応援がこだまする。

両校の応援団の演奏。チームメイトの声。この日の為に、僕たちの為に練習してくれた吹奏楽部の気合の入った演奏は、学校で聞くのとはまったく迫力が違う。音に想いを乗せて祈るように手を胸の前で組む応援の人たち。

 

 

バッターの構えを見る。スタンス位置を見る。

大丈夫だ外角で。気合の入った今日の球がうまく低めにきたら絶対ゴロになる。ここは打ち取るしかない。打ち取りたい!ヒットはもちろん、犠牲フライすらさせてはならない!!

 

 

「タイム!」

相手の監督がバッターを呼んだ。何を話してるのか。「落ち着いていけ」とか「結果は気にするな」とか、どうせそんなとこだろう。

早くしろよ!とっと終わらせて俺らが勝ち越してやるから!

戦闘モードの僕は心の中で毒づいた。

 

 

ゆっくりとバッターが戻ってくる。バッターボックスに立つ。

仕切り直しだ。サインは同じ。頼む!低めに投げてくれ!!

 

 

投球モーションに入るピッチャー。渾身の力で投げ込んできた。

 

!!

まずい!甘い!!!

その刹那、何故だかボールは目の前に転がった・・・・・

 

 

 

スクイズ!!!

 

届きそうで届かないボール。セカンドもピッチャーも動き出しが遅い!

完全に意表を突かれた!!

キャッチャーの僕の方が近い!!

 

間に合う!

 

僕はボールを取りに行った。

時間が止まる。悲鳴のような歓声が聞こえる。細かな放物線を描くボール。

 

 

わ~~!!っと大きな歓声が上がった。

無人になったホームにランナーが帰ってきたのだ。ボールを補給し、タッチに向かったその刹那の出来事。

 

そのまま僕たちは負けた。

9回裏の攻撃で、ランナーを2塁に置いた僕らのチームは、ラストバッターにありったけの声援を飛ばした。みんなで叫んだ。祈った。願った。しかし願いも祈りも届かなかった。

こうして僕らの中学最後の試合は終わった。

閉会式を思い出せない。賞状を貰った事すら覚えていない。

青空に吸い込まれる相手校の校歌だけがいつまでも耳の中で鳴っていた。

 

 

 

■ 前年7月 【新チーム発足】■

先輩たちが引退し新チーム発足後、数週間が経っていた。

僕らの中学は野球が弱い。小学校からスライドしただけの僕らの中学は、学校内全員が顔見知りで入学式の時、ドキドキ感も無い。別の小学校から来る新しい顔ぶれなどいない。地区に小学校が一つしか無いのだから。かつ卒業した小学校は目の前だ。会おうと思えばいつでも会える小学校の恩師。卒業式で涙している女子が不思議でならなかった。

数の原理が働かない我が中学校は、小学校の弱小野球部がそのまま中学へと進学する。弱小が中学で強豪になろうわけもない。万年一回戦負けが義務付けられたかのようなチームだったし、そのことを変えようという意識も薄かった。

「キャプテンはmifuketaにやってもらう」突然の監督の話。小学校のキャプテンがまた中学でも主将を務めるものだとばかり思っていた。寝耳に水である。ってか僕にキャプテンシーなど無い。どちらかといえばお茶らけたキャラで通していた。

静まり返るミーティング。誰も何も言わない。言えるわけも無い。当時の部活動は軍隊式でスパルタ式。監督とまともに会話する事さえ憚られる。

散会し帰宅の準備に取り掛かるチームメイトの雰囲気は今でも忘れない。みんながどう思っているのか、淀んだ空気が全てを物語っていたのだから。

 

 

 

■ 夏 【新人戦に向けて】■

我が中学の他の部活はというと、良い成績を残していた。柔道部などは全国大会で上位に食い込む快挙を成し遂げたばかり。万年一回戦ボーイの野球部は、意識が低い軍団として見られており、そのことが悔しかった。

新チーム発足後、監督の指導の下、礼儀礼節から始まり、過酷な練習の日々を僕らは乗り越えていった。

『勝ちたい』『他の部活に負けたくない』

いつしか僕はそんな感情を強く抱くようになっていた。喧嘩が絶えない僕の家はいつも冷たく落ち着かない。野球だけが僕の心のよりどころだった。

努力こそがスポーツ上達の最低条件。『他のチームより多く練習すればいい』いつしか僕はチームにそんなことを求めるようになっていた。量も質も。チームメイトを厳しく叱責し、多くを求めた。僕は誰よりも動き誰よりも走り、誰よりも声を張り上げた。気持ちを伝えたくて。体力の限界まで絞り出す練習は、腹筋に力が入らず、本当に声が出なくなったこともあった。『努力はきっと報われる』。幼く未熟で世間知らずだった僕はそのことしか頭に無かった。その方法しか知らなかった。

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入道雲が湧きたち、どこまでも高い夏の空。熱風が吹き、あっという間に練習着が汗だくになる。澄み渡る青空の日もあれば、重くのしかかる雲の日もあった。田んぼに囲まれたグラウンドは、チームメイトの声をはるか遠くまで運んでいく。いつしか地元の人たちが足を運んでくれるようになった。今までに無い事だ。練習を見守る人たち。大学まで野球を経験した中学校OBの指導も受けるようになった。何かが少しずつ変わってきていた。

 

 

■ 秋 【新人戦】■

僕はチームメイトから嫌われていた。自分勝手で独りよがりで、練習時には厳しく当たり、少しの手抜きも許さなかった。自分でも分かっていた。みんなと仲良くやろうなんて思ってもいなかったし。『勝ちたい』ただそれだけだった。日々の練習終わりのミーティングで監督の前に整列するとき、僕の隣には、わずかに隙間が空く。その隙間が心の距離を物語っている。こんな感じで迎えた新人戦。毎年一回戦負けが当たり前だった僕らのチームは快進撃を始めた。とはいうものの小さな地区である。3つ勝てば決勝にいけたし決勝に行った。そして準優勝することができた。集まる父兄。笑顔のチームメイト。地元の新聞にも掲載された。我が中学校野球部が地区大会で準優勝したのは25年ぶりだそうだ。知らなかったし知りたくもなかった。浮かれる周囲を見て冷める自分がいた。僕らは負けたのだ。負けたから準優勝だったのだ。

そして大きな問題も抱えていた・・・

 

 

■ 不動のエースは諸刃の剣 ■

小学校からスライドしただけの僕らの野球部。小学校との違いと言えば、後輩の力を借りるようになったこと。最上位学年だけがレギュラーではなくなった。実力があれば下の学年でもスタメンに、レギュラーに選ばれた。当然僕らの学年にもエースがいる。小学校からずっとエースだ。上背もあり体格もいい。右の本格派。投球練習を共にするが、球の勢いと力は控えのピッチャーと格段の差があった。まさにエース。部活中も学校生活でもヤンチャで、後輩からは恐れられていた。一見肝が据わっているタイプに見えるのだが、いつからか試合でストライクが入らなくなることが多くなった。フォアボールで押し出しを繰り返すようになったのだ。そんな彼を監督がだまって使っているわけが無い。新人戦の準優勝は後輩ピッチャーで勝ち進んできた結果だった。力の差は歴然。しかしストライクが入らない。これでは試合にならないのだ。その後もエース番号を背負ったままベンチを温める日々が続いた。僕はとにかく勝ちたい。優勝したい。そのためにはどうしても彼の力が必要だった。どうにかしたかったが、他人のメンタル的問題を解決するだけの知識も経験も中学生の僕にあるわけも無く、時間だけがただ過ぎていった。

 

 

■ 冬 【雪解けに向けて】■

極寒の冬を超え、暦はもう3月に入り、いつもの年なら雪解け時期を見越せるころだった。しかしその年は豪雪で積雪量が多く、いつまでもグラウンドには雪が残っていた。冬場の練習は飽きる。基礎トレーニングがメインで地味でキツイ。ボールを使った練習は本当に少なかった。そんなある日の積雪ランニングの時、だらけた姿を目にした。終盤に差し掛かった周回数だったが、全員でもう一度やり直した。次の練習に移行する時間が遅くなった。そのことで監督に呼ばれた。その日の練習を終えてからだ。何故遅くなったのか問われたので事情を説明した。「お前みたいなキャプテンは初めてだ」と言われた。褒めてもらったのかと思ったら、次の言葉が発せられた。「いつになったらグラウンドで練習するんだ?お前どうするつもりだ?」僕は何を言われてるのか理解できなかった。何も答える事のできないままその場を辞去した。何なんだ?何を言われたんだ?こんなに一生懸命やっているのに、まだ何か俺に、俺たちに足りないものがあるというのか?無性に腹が立った。大人に対してこんなに腹が立ったのは生まれて初めてだ。

 

僕は除雪道具を持って一人でグラウンドに向かった。その日は土曜日で学校が早く終わった分、練習終わりも早かった。それでもあたりは薄暗くなっている。近くにある外灯だけが僕とグラウンドを照らしていた。

『内野だけならなんとかなる!やってやる!!』そう強く思い、一人で除雪を始めたのだ。あまりの腹立たしさに時間を忘れて作業をした。腹立たしさと悔しさが体から溢れてきて止まらない。1時間は軽く過ぎただろうか。3月の風は冷たく頬に刺さる。その温度差で体から湯気が出ていた。あたりを見回す。

自分が除雪した範囲を観てビックリした。内野の1/5も終わっていない・・・・朝までかかっても無理かもしれない・・・・・そう思ってしばらく立ち尽くしていた。

あたりはもう暗く外灯の光を、降ってくる雪が横切り、チラチラと影を成す。体全体から立ち上る湯気が、気温の低さを改めて感じさせ、夜のとばりが下りきろうとしていることを伝えている。遠くの家には明かりが灯り、温かく光る灯火が、寒空の外に立ち尽くす自分を惨めにも感じさせた。そんな時である。何やら遠くから声が聞こえる。僕を呼びながら誰かがこちらに向かって来る。しかも一人二人じゃない。なんとチームメイトだった。皆一様に除雪道具を持っている。「キャプテーン!」と叫びながら来る奴もいれば「mifuketa~」と名前を叫ぶ奴もいた。

 

まさにドラマのような出来事。生きていると、一生懸命やってるとこんなことが起こるのかと、感動で自然と涙が込み上げてきた。集まってくる奴らは冗談交じりに「泣くなよ!」とか僕に声をかけながらバラバラに散って除雪を始めた。10人以上の集まりだった。皆、照れ隠しでニヤニヤしている。有難かった。本当に心から感動した。これまでの日々が報われた瞬間だった。嬉しくて泣きたかった。でも、泣き顔を見られたくない。堪えるのに必死になりながら作業した。

数の力は凄い。数時間で内野の除雪を終えることができた。疲れ切った体で見上げた月の無い冬の空は澄み渡り、無数の星で埋め尽くされている。いつまでも引かない汗は、体が熱いせいなのか、心が熱いせいなのか自分でも分からなかった。

 

 

 

 

■ 春 【春の大会】■

雪解けを超え、通常練習が始まった。春の大会を目前に皆気合が入っている。新チーム発足時には、バラバラだったみんなの気持ちが、いつしか一つにまとまっていた。1年生も沢山入部し、チームは活気に溢れる。いつも気合をかけていた僕が、逆に気合をかけられる場面があるぐらい(笑)『いいぞ!乗ってきた!』そんな実感が僕を包んでいた。

田んぼには水が張られ、うるさいぐらいのカエルの合唱が響く。苗が植えられた田んぼを太陽が照らし、キラキラとダイヤの粒が光っているかのようだ。その太陽がオレンジ色になり、月と入れ替わるまで日々の練習は続いた。

 

迎えた春の大会。順当に勝ち進み準決勝までたどり着いた。久々のエース登板。接戦で迎えた試合も終盤。ランナーを背負った状態で突如として乱れだした。

 

「おい!いい加減にしろ!いい加減に入れろよ!」

 

繰り返されるフォアボールに、僕は試合中にも関わらず、マウンドに向かい大声で怒鳴った。

ここまでは順調に試合を運び、剛腕をうならせ凡打と三振の山を築いていった。それなのに・・・・

 僕は奮起して欲しかったのだ。僕に対する怒りの力でもいいからミットに向かって思い切り投げてほしかった。これまでの練習はなんだったのか?努力はなんだったのか?

だがそのまま押し出しで負けた。この試合に勝てば決勝だった。新人戦に次いでの快挙だった。落胆とやりきれなさがチームの雰囲気を覆う。冬場の練習を思い出しながら、あの除雪を思い出しながら皆がこの一敗の重さを悔やんでいた。そして何より負けの原因であるエース自身がうつむき顔を上げることは無かった・・・

 

 

 

■ エースは希望 ■

チーム内で無口になったエース。僕との関係もギクシャクしたものになった。キャッチャーは女房役と言われる。この時は離婚寸前の状態だった。そりゃそうだろう。大勢が見守る中、それも試合中に怒鳴られたのだから。僕はエースの顔に泥を塗り、そして辱めをうけさせたのだ。

黙々と投げ込む日々のあいつを、ただ見守ることしかできなかった。

 

中学生最後の大会を控え、監督とのミーティングでチームメイトの意見を聞く場面が訪れた。最後の大会のエースを誰にするのかという決が取られたのだ。投票権があるのは3年生のみ。

予想もしていなかった突然のエース選び。皆、目配せして互いの顔色を伺う。ほとんどの奴の瞳が揺れて泳いでいる。『勝ちたい!』『優勝したい!』最後の大会を迎える僕たちの想いは一つだ。

選択肢は二つ。昨年の新人戦で投げた2年生ピッチャーか、フォアボール癖が治らない僕らの学年のピッチャーか。下を向き沈黙を貫く僕らにしびれを切らした監督が、一人ずつ聞いていく。キャプテンである僕が一番最初だった。

 

僕は知っているあいつの頑張りを。

見てしまったのだ、あいつの努力を。

めったに無い休養日。人目のつかない場所で一人黙々と走りこむ姿を。

見てしまったのだ、膝に手をつき滴り落ちる汗をぬぐい「ちきしょー!」と叫ぶ姿を。

あいつはずっと戦っていたんだ、一人で。エースという重圧を抱えて。苦しんでいたんだ自分に。勝ちたかったんだ自分自身に。

『努力はきっと報われる』そのことを伝えたい。その姿を見てみたい。

あいつの気持ちが痛いほど胸に刺さったその日は、眠れなかった。本当に枕が涙でぬれた。

僕は3年生ピッチャーを選択した。僕らのエースを。他の奴らの選択は言うまでもないだろう。満場一致で3年生ピッチャーである僕らのエースが選ばれた。

「こいつと心中するぞ!」そう言って監督はその場を去った。僕らのエースはうつむき泣いていた。「一緒に頑張ろう!」みな思い思いに声をかけ、肩に手を置きその場を離れていく。

 

その後、彼は見事に復活した。最後の大会まで数の限られた練習試合。

勢いのある球筋。切れのある変化球。ボールとストライクを投げ分けるコントロール

行ける!!優勝まで手が届く!!

三振と凡打の山を積み上げる僕らのエース復活に、練習試合の相手を物足りなく思わせるぐらい力を付けた僕らのチームに、心躍るような期待が込み上げてきた。

仲間と心を一つにし絆を深めた力は何よりも強い。そんなみんなの瞳の奥から発する強烈な想いは、僕たちを勝利へと導く強いエネルギーとなる。

 

 

 

 

■最後の大会 【決勝戦】■

 ついにこの時がきた。優勝まであと一つ。凛々しく引き締まったチーム一人ひとりの顔が、この日の為に積み上げてきたものの大きさを物語っている。スタンドもベンチもすべてが一つになるときだ。さあ、試合が始まる。僕らの3年間の集大成が。

 

 

「よっしゃー!いくぞー!!」

      「おおぉ~!!」

 

 

僕らの掛け声が空に吸い込まれていく。

その空は高く青く突き抜けて、そしてどこまでも遠く広がっていた。

無限の可能性を秘めた僕らの未来のごとく、広く広くどこまでも。

 

 

 

■ 僕らの今 ■

中学を卒業し、僕らの学年の野球部と正式に顔を合わせたのは3回。成人式と女性の厄払いと男性の厄払い。そのうち全員が集まったのは成人式のみだった。最後の大会も結局準優勝でかつ25年ぶりだった。新聞にも取り上げられた。万年一回戦負けの野球部はこの年から変わった。僕らの想いが引き継がれたのだ。

成人式の時、当時の話題で盛り上がったのは言うまでもないだろう。

僕らには絆がある。それは決して失われることは無い。中学という多感な時期にバラバラだった心が一つの目標に向かい一致団結し努力を積み上げ一つの結果を出した。この経験は後の人生において、各々の大きな糧になったはずだ。そしてその経験を共にした仲間を一生忘れることは無い。

たとえどこにいようとも。

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※27年も前のことであり、一部記憶が定かでは無い部分もありますが、全て実話です。ここまで読んでくれた方がいらっしゃるなら、本当に心から感謝いたします。貴重なお時間を割いてこの記事を読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m

 

 

少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。