ホントは とじぇね

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

スープの味がしないのはコロナのせいとは限らない

疲れていて何もしたくない時がある。

体と心が同時にやられて、「今日は何もしたくない」と思う時がたまにある。

 

帰宅途中の車の窓から、半分オレンジ色の空。

その上にはすでに夜の黒がグラデーションに落ちてきている。

かろうじて信号だけは認識できているような状態で自宅までたどり着く。

 

 

 

こんな時に限って9キログラムの洗濯機には満杯の洗濯物が。

自分の腕すら重く感じながら、洗剤と柔軟剤を投入してみる。

いつもなら洗い上がりを待ち遠しく感じるのに、今日に限っては干したい気持ちになりもしない。

 

 

リビングの明かりはついていて娘がご飯の支度中。

珍しいこともあるもんだ。

自粛要請の真っただ中で暇を持て余したのだろうか。世界の不幸も少しは役に立つ。

 

 

 

娘の耳には常にワイヤレスイヤホンが差し込まれている。

音声認識とわずかなタッチで起用にスマホを扱いながら、時には誰かとおしゃべりをし、時には動画を眺めたり。

急に変な動きをしだしたらそれは、ティックトックで踊っている証拠。

 

 

 

我が家の夜ご飯は『父』と『子供二人』で分かれている。

家族会議の決議が採択され1年前から法令が施行された。帰宅時間があいまいな父に夜ご飯を任せていられないとの理由からだ。

 

決議が採択された後、予算会議を行い1か月単位で『子供の夜ご飯』という名目の歳出科目が計上されることとなった。

息子と娘の自炊が始まったのだ。

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初めのうちは楽しんで作っていたものの、しばらく経つと『献立』や『帰宅時間の不一致』や『役割分担の不平等』や『めんどくささ』などの障害にぶつかり、その結果『できあいの物』という便利で且つそれなりに満たしてくれる代物を食することが多くなった。

 

親心としては、結果的に『自炊』になったことを喜ばしく思い応援していた。

社会人と高校生である。将来のことを思えばそろそろ自分たちで予算を管理し計画を立て栄養を考慮し自分で作るという、一連の流れを学んでほしかった。

 

しかし父親の目論見達成率は現在、低空飛行を続けている。夜ご飯を作っている姿を見ると『珍しい』と感じるほどに。

 

 

 

 

 

僕がよほど疲れた顔をしていたのだろう。リビングに入った僕に娘が「お帰り」と言ったまま、その後は放置してくれた。

 

 

見もしないテレビを付けっぱなしの娘に一言注意したかったが、そのことすらめんどくさく思うぐらい疲れていた僕は、それこそ見もしないテレビ画面をただ眺めていた。

 

「お父さん」

と呼ばれて右手のキッチンに顔を向けると、カウンター越しにビールと娘が作ったスープを渡された。

 

濃くて白い蒸気が立ち昇るそのスープは『火傷』を思わせるぐらいに熱そうだ。

冷めるのを待つため、ビールのプルトップを開ける。

噴出するガスの音。

「とりあえず今日までたどり着いた」心の中でそうつぶやく。

 

 

離婚して4年。妻であり母である人が我が家から消えた。

どうしてこんなことになってしなったのかなんて、今さら考えても無駄。

離婚により子供たちは、『経験しなくてもいいこと』と『普通より早く自立を求められること』とに挟まれながら日々を過ごしている。

僕の体は一つしかない故、特に娘には何かと単独行動を(諸手続きや通院等)をお願いすることが多い。

 

子供たちに対して『申し訳ない』という気持ちが消えたことは今まで一度も無いし、これからも消えることは無いと思う。

そんな負い目もあり僕は、子供たちに家庭運営に携わるお願いを極力避けている。

なるべく普通の家庭と同じように生きて、生活してほしい。

自分の人生に集中して欲しい。

 

 

 

なんだか今日はビールが苦い。

 

 

 

気づくとキッチンから消えていた娘が、洗濯籠に山盛りになった洗濯物をもってリビングに入ってきた。

普段は娘の下着のはてまで僕が干している。今日はどういう風の吹き回しだろうか。

 

 

 

慣れない手つきで洗濯物を干しながら娘が僕に言う。

「やってほしいなら言ってよね」

 

 

 

 

 

 

なんで怒ってんだよ。頼んでないだろ。

 

 

「ありがとう」

 

娘の背中にそう言ってスープを一口すすった。

 

涙が出たのはスープが熱かったからだと思う。

 

 

 

 

少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。