ホントは とじぇね

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

謝罪の真意はどこにある?


「お母さん!ありがとう!!」

 

店の引き戸を開けた先にいた、高齢の女性に幸子は声を掛けた。どうやら知り合いのようだ。

店内には所狭しと客が座り、全員が肉を焼く煙は換気が追い付かないことを知らせているかのように充満し、店の中を薄っすらと白く濁していた。かなり昔から営業しているこの店は設備が古いのか、売り上げる肉の量に対して、換気がまったく追い付いていない。

 

そいうか、、、知り合いか。。。バイトの客と同伴かアフターで利用するのかな・・・。この店は絶対に無理だと思ったのに。。。

 

幸子に対して投げた僕の意地悪は、見事に砕けた。きっと幸子は顔見知りの好で、大人気店である神の川の席を確保したのだろう。それにしてもよく、この12月という飲み会シーズンにこの店を予約できたものだ。普通に尊敬できる。しかし、『匂い攻撃』という、幸子の高級な衣服に焼肉の匂いを付けるというプチ意地悪は成功だ。まぁこれで良しとしようじゃないか。神の川を選んだ理由は、意地悪をかました内容はこのことも含む。万が一予約が成功しても、この店に入ったら絶対に服に匂いが付く。焼き鳥屋並みに。いや、それ以上に。

 

店内の一番奥の席に通された。お座敷スタイルで、靴を脱いで僕たちは席に座った。

まずはビールで乾杯。ビールという飲み物は季節を問わない。暑い夏なら喉を潤し、寒い冬なら心を潤す。とにかく乾杯はビールと決まっている。宴の始まりを体に告げるの飲み物として、一般庶民はおろか、上級国民にも広まっている。

 

「何にする?」という幸子の問いに対して「任せるよ」と言った僕。今回はいいだろう。今回は大丈夫だろう。何せ今日は幸子のおごり。たとえここでドンペリが出てこようとも、一銭だって払うつもりの無い僕は、堂々と構えていられる。

 

運ばれてきた肉を二人してせっせと焼いた。独特な付けダレも売りのこの店の焼肉は最高だ。肉の焼ける軽快な音と共に、煙もまた湧き上がる。食欲が一気に膨らんで、その勢いで肉を口に運ぶ。

 

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この間の件を快く思っていない僕は、封筒に収めた7万円をクラッチバックに入れている。

飲食代の内訳は無い。何せクラブだからね。しかし大体の予測として、ドンペリのロゼは5万程度のはずだ。

 

 ※この話の続き

www.hontoje.com

あえてそうしていた訳ではないが、この時の僕は口数が少なかったかもしれない。焼肉に夢中になっていた事もあっただろうが、幸子を目の前にしていながら、確かに会話が少なかった。幸子が発するたわいもない話に頷き、相槌をうつことの方が多かった。

 

「キムチ頼んでいい?」と僕は幸子に聞いた。この質問は、『この店の代金はあなたが払ってくれるのだから、注文はあなたの許可が必要だと思っています』の意が込められている。

目の前にいる幸子がコクリと頷いたのを確認してから僕は振り返って、カウンターの奥にいる店主に注文した。顔を元に戻したとき目の前には、箸をそろえて置き少し下を向いた幸子がいた。

「この間は私、調子に乗っちゃって・・・ごめんなさい・・・」

長い髪を一つに束ねて、片方の肩から降ろして、うつむき加減の幸子の綺麗なオデコが僕を見つめている。

NHKの桑子アナが流行らせたんだっけ?頭の後ろで髪を一本にまとめられた頭頂部は、上手に乱れさせた髪の結い方が施されており、幸子のセンスの良さを伺わせた。

 

好きだなぁ・・・こういうの・・・・

 

謝ってくれている幸子を見ながら僕は、こんなことを考えてしまった。

 

しゅんとしてうつむく幸子が健気で可哀そうに思えてきた。僕も悪かったかもしれない。決してお金のあるふりはしていないが、幸子に対して寛大な対応をしていたことは間違いなくて。ましてや、多大なる下心を持って幸子に接していた僕は、何か勘違いさせるような雰囲気を出してしまっていたのかもしれない。

 

「いやいや、大丈夫だから!(笑顔) そうだそうだ!お金渡しておくね、この間の!」

 そう言って僕は、クラッチバックから封筒を取り出した。

「私もお金出すよ」

封筒を手にした時に、幸子の口からそのような言葉が出てきた。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ迷った。金額が金額なだけにね。。。。

 

「いや、本当に大丈夫だよ。ほら、そのお陰でこうして幸子さんのご馳走で貴重なお店に来れたわけだしさ!」

 

僕はこの時、思いっきり虚勢を張った。その時ならまだしも、後になってから女性にお金を払わせるなんてカッコ悪いこと出来ない。ましてや、ましてや、、、ましてや幸子に対して。。。。

 

申し訳なさそうな顔をして幸子は、封筒を受けとろうと手を出した。

僕の一瞬の心の葛藤を読み取ったのだろうか。「ミフケタさんって優しいね♡」

何とも言えない愛らしい、可愛らしい笑顔で幸子は、僕が封筒ごと差し出した手を両手で包んでくれた。

 

 

 

今夜、行けそうな気がするぅぅぅ~~~

 

 

 

 つづく・・・

 

少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。