僕は、主食である米を買ったことがない。なぜなら貰えるから。
しかしただでは無い。農家の長男である僕は、毎年5月の第4週目には『田植え』の手伝いに出向いて、労働にて対価をお支払いしている。
衣・食・住という人間生活の基本を構成する『食』」の部分に携わる農家。
田植えのお手伝いは、人間が生きる為に絶対的に必要で重要な部分を担っている農業の素晴らしさを体験できる絶好の機会です。
晴天のなか、大量の汗をかきながら、苗を田んぼに運びました。
「汗の量が半端ないな」と思ったら、5月だというのに気温は30度を超えていました。
暑いはずぅ~~~どんだけぇ~~~!!
サラリーマンである僕にとって、農業というのは本当に憧れます。
外的なストレスは全くと言っていいほどありません。
シビアな期日もありません。
天候や気候に合わせながら、農家自身がスケジューリングし、日々の作業量を決め労働を行います。
農家が対峙するのは、人間ではなく、『自然』です。
農作物である植物、気温、水温。どれをとっても会話によるコミュニケーションが通じる相手でもなく、農家は天気予報と、蓄積されたデータを駆使して、収穫の時をゴールとし生育を見守り、管理する日々を送っていきます。
自然災害など、無情で非情な事態に遭遇してしまったら、『仕方ない』のです。なぜなら言葉の通り『仕方』が『無い』のですから。
自然をコントロールできるほど、人間のテクノロジーは追いついておらず、追いつくこともできそうにない。自然の偉大さを身をもって知るのみです。
農作業というのは、地味にキツい(笑)
凄くキツいのではなくて、地味にキツいのです。
ちょっと重かったり、少しの間の中腰だったり、小川を何度もまたいで苗を手渡ししたり。
これ絶対痩せるな!という確信と、『筋トレダイエットツアーを企画したら、労働力と収入の両方を得ることができるかも?』とか、サラリーマン的妄想が作業の邪念となって、何度も頭の中に浮かんでは消えました。
見上げると青い空。小川の流れる音。田んぼに張られた水がキラキラと輝き、苗の上を風が通り過ぎる。目の前に広がる自然は、普段の殺伐とした社会での生活を一時的に忘れさせてくれる。
生きるってこういう事だよな
心からハラオチする瞬間です。
映画に出てくるジブリの世界が、人々の心を癒し、何とも言えない世界観を感じさせ、心を掴んで離さないのは、僕たち人間に無意識に記憶された古からの営みの素晴らしさ、尊さに由来するものではないでしょうか。
日々世話しなく過ぎていく時間。街や社会に削られて行く心。
僕たちが利便性と引き換えに失ったものは大きかったように思います。
帰ろうと思えばいつでも帰れそうで、取り戻すことができそうな生活なのですが、一旦社会のシステムに組み込まれてしまった僕は、そう簡単に離脱できそうにありません。でもいつの日か、この暮らしを手に入れたい。この場所に戻ってきたい。
自然とうまく調和し、逆らうことなく受け入れ自然の偉大さと尊さを味わいながら、穏やかな時間を感じて。植物と水と風を感じて。
そんな老後を楽しみにこれからを頑張ります。
少しでも誰かの心に響けたら!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。