ホントは とじぇね

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

田舎の夏休の不思議

首筋に流れる汗を感じた。頬を風が流れていく。その風は顔から足元へと移動し、また戻ってくる。瞼の奥にまで光が届いて、意識が徐々に戻ってきた。

 

やべ!!遅刻する!!

 

そう思った次の瞬間に、思考が飛び込んできた。

 

夏休みだった・・・

 

不明瞭なままの視界を煩わしく思い、目をこすりながら現在の時間を察しようと窓の外を見た。開け放たれた窓には網戸が張ってあり、その網を通り抜けた水が、窓額縁を濡らしていた。どうりで蒸し暑いわけだ。扇風機の風があたっていない首筋には、大量の汗が流れている。

 

小学校から続けていた野球。高校生になり、初めて硬式ボールに触ったときには驚いた。石のように固いそのボール。軽い恐怖すら覚える。そんな、高校野球始めたてのころから1年が経過し、先日の夏の大会で同点打を打った自分を思い出していた。

 

一階から僕に電話が入ったことを伝える母の声。夕立で濡れた窓額縁を脱いだばかりのTシャツで拭いているときだ。

 

あいつらだな

 

 

 

夏季休暇となり、お盆期間中は部活が休みとなる。13日に墓参りに行く以外はまったくのフリーだ。ここぞとばかりに夏休みを謳歌する。寝る間も惜しんで遊びまくるのが、ここ数年の恒例行事になっていた。

高校生にもなって『遊ぶ』といったら決まってるでしょ!

 

川に、山に、花火に、真夜中のプールに、朝まで続くテレビゲーム。

じょ、女子の影など無い。そんなもの、夏の暑さで蒸発した・・・・僕らは健康で健全なのだ!

汗だくの男子高校生5人が、夜なよな田舎を徘徊する。そしていつもの場所で恒例のイベントが開催される。

 

蒸し暑さだけを残して太陽がいなくなった夜は、間隔が空きすぎた街灯だけの明りがアスファルトを薄暗く照らしている。

花火を買い込んだ僕らは、歩行者天国となったその場所で、思いおもいに火をつけるのだ。火薬の匂いが混じった煙は、あたりに漂い、暗幕から逃げるために歩いたり走ったりしながら花火を楽しむ。キャッキャ、ワイワイと寂しがり屋の集まった花火大会はやがて、お決まりの線香花火の落下で幕を閉じる。

真夜中の道路に寝そべり、天然のプラネタリウムを眺めて、時たま流れる星のくずに祈るのだ。

 

「来年こそは彼女ができますように」ってね。

 

こんなことを続けていると、さすがに眠くなる。帰宅の途につく。

通いなれた場所、何度も通った道。帰るのにはまた、決まった道を通る。しばらく走った先には、高い杉の木が並び、道を隔てた隣は墓地になっている。我が家のお墓もあるその墓地は、結構な広さで、この地区の住民の大半の先祖が眠っている。

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道幅いっぱいに広がった僕ら。いつの間にか僕が先頭になって自転車をこいでいた。後ろを振り向くと誰もいない。

 

またかよ・・・・

 

やり始めたのは僕。自然に先頭になった人を残して、散り散りに隠れるのだ。墓地の前でね。もう散々やったこのくだり。

 

「飽きたんですけど」

後ろを振り返ったまま、普通の音量で言葉を発してみる。

 

誰も出てこねぇよ・・・・

 

しばらく辺りを見渡す。

杉の木と民家の生垣がサワサワと風で音を鳴らしている。

 

肩に感触があった。誰かが僕の左肩に手を置いた。首を右側に回して後ろを振り返っていた僕。左側はノーマーク。

顎を引いて顔を戻しながら流し目で、左肩をゆっくりと見た。誰かの手が乗っている。

 

脅かすのも上手くなったじゃないの

 

心の中でそう思いながら、そのまま後ろを振り返った。

 

 

 

誰もいない・・・・

 

 

本当に誰もいなかった。

新しいパターンは、脅かすのを止めて、そのままマジで帰るという技だった。

 

 

じゃあ、さっきの左肩に乗った手は誰の?

あの感触は何?

 

 

 

 

 

※僕は科学を信じる人間です。きっと遊び疲れて幻覚を見たのでしょう。

 少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。